記念誌の発行や講演会など
文化教養を高めるカルチャーセンターとして親しまれている鎌倉市小町の鎌倉婦人子供会館が今年設立70周年を迎え、記念事業が行われている。
同館は、1953年(昭和28)、婦人の教養を高め、子どもの学ぶ場所をつくろうと鎌倉在住の旧女学校・女子大学からなる30の同窓会の有志が集まり、「鎌倉連合婦人同窓会」を結成し、募金活動や、鎌倉市・周辺住民の支援を得て財団法人として材木座に設立された。1958年に現在の地に移転し、本館・新館(昭和館)の増改築、さらに2016年に本館・昭和館の改修、平成館の改築工事を行い、今に至る。2012年から公益財団法人に移行した。
今回70周年記念事業として取り組んだのが、『七十年のあゆみ』の記念誌の発行。創立以降20年、30年、50年と節目に発行されている『あゆみ』シリーズの4冊目で、同館理事長で、『かまくらの女性史』編纂員を務めた横松佐智子さんを中心に2年がかりで編集した。ゆかりの方々の祝辞、会館で講座や教室を開催している講師や、ボランティアで会館の運営を支える同窓会会員の寄稿、2002年からの20年間のあゆみなどが掲載されている。
記念事業の一環で6月3日、前法政大学総長・田中優子さんの講演会「江戸の女性・現代の女性」が開かれる。7月4~10日鎌倉駅地下道ギャラリーで展示も行われる。また、初の試みで、教育支援制度を創設した。このほか、会館ロゴ作成やホームページの刷新、会館の庭に子供のためのうんてい、テーブルの設置などもしている。
現在、16校の同窓会約40人が運営しており、横松理事長は「同窓会を連合した組織は全国的にもめずらしいし、70年も引き継がれてきたことは注目に値する。皆さんにもっと会館のことを知ってもらい、利用してほしい」と話している。
同館 0467・22・0507
鎌倉市在住の彫刻家で大佛師の奥西希生さん(44)が、世代を超えて制作する「千年彫刻」の計画に着手している。 まず「十年彫刻」として2023年から千年彫刻の本尊にあたる六道輪廻図の6つの観音像と「六道館」を創る。「百年彫刻」では、2128年までに内外を巨大彫刻で埋めた「輪廻堂」を建築し、「千年彫刻」で、3073年までに「輪廻堂」を中央に置いた「深譚殿」を完成させる。すでに六道館に安置する仏像の一つ、馬頭観音坐像を彫っていて完成真近だ。
鎌倉市観光協会制作の今年のうちわは鎌倉出身の日本画家・神戸勝史さんの「睡蓮」。1本400円(税込)、6月6日発売、同会事務所や通販サイトで。
0467・23・3050
浄光明寺・文殊菩薩坐像
鎌倉仏といわれ、武家に好まれた鎌倉地方特有の技法、土紋装飾の施された像(土紋仏)がこの度、5百年の時を経て新たに扇ガ谷浄光明寺さまに文殊菩薩坐像として誕生、開眼供養されお参りさせていただきました。
像は大きな獅子がこちらを睨み、その上に文殊大士が静かに坐しておられます。流れるような流麗な法衣に包まれその姿は気高く静寂感がこちらに伝わってきます。
2014年(平成26)2月の大雪に浄光明寺境内の霊木、犬槙の大樹の枝が雪の重みで折れました。大三輪龍哉住職は落胆され、この霊木をなんとか生かしたいと、仏師・奥西希生師に託しました。それが鎌倉仏の再興のはじまりでした。
土紋とは、漆と土を混ぜ木の型に込め成形したものを仏像の表面に張り付ける装飾技術で立体的な美しさが特徴的です。しかしその制作は困難を極めました。現存する像はわずか8躰、資料も残っていない、まさにゼロからに近い挑戦でした。
造立のはじまりは材である霊木を清める儀式、そして境内の祠にお祀り寝かし、仏師は鑿入れより精進潔斎、日常の生活に五戒を守り続け仏と向き合うのだそうです。
奥西師は二階堂に工房をもつ代々仏師の家で、明治期には廃仏令により仏師は廃業、多くの困難があったそうです。そして希生師の代になり、東京芸大を卒業後、幾多の師に弟子入り修行。そして浄光明寺、大三輪住職とのよきご縁によって結ばれついに鎌倉仏が完成、再興されました。そして大三輪住職から「大佛師定海」という称号を授与されました。
令和の鎌倉仏師、その誇り高さと真摯な取り組み。溢れるような師の笑顔に今後の「みほとけ」の誕生が楽しみです。
寄木造り。像高60cm。
2020年開眼。非公開。
奥西 希生(おくにし きしょう)さん
「土紋仏」という、奈良や京都にはない鎌倉独特の仏像様式がある。土と漆を混ぜて木型で抜いた「土紋」を衣装などの装飾に使った仏像をいう。現存するのは鎌倉でも数体。室町時代に絶えてしまったそのわざを650年ぶりに復活させた。
2020年7月に扇ガ谷の浄光明寺で、土紋技法でつくった文殊菩薩の開眼法要があった。その功績をもって同寺から「大仏師」の称号と「定海」の名を授かった。鎌倉で唯一の大仏師だ。
代々の工匠の家に生まれた。祖母は鎌倉彫の彫師、祖父は塗師。彫師を女性が受け継ぐのが家の習わしで、母と姉は彫師、父は洋画家だ。幼稚園児のころから祖父の漆塗りを手伝い、小学生のころには祖母のもとで彫刻刀を握っていた。
東京芸大の彫刻科で主に木彫を習得。同大の大学院に通いながら、京都や奈良で仏像彫刻を学んだ。蒔絵の人間国宝のもとで漆の技法も修業した。明治時代の廃仏毀釈で途絶えてしまった鎌倉仏師を再興させたいという、祖父三郎さんの言葉が頭にあった。
土紋の研究には27歳から7、8年取り組んだ。1970年代に研究者が出した本が1冊あるだけ。土と漆の配合を変えてみたり、土器を砕いたものを試してみたり。できたものを専門家に見てもらって、200パターンほどから徐々に絞っていった。
「木を彫る方が、実は楽で早い。だが土紋は見栄えが違う。大量生産のためではなく、布の柔らかさを表現するためのものだったのではないか」。
17歳のころ、将来の目標を10段階で立てた。最上位は「人類未達の領域」。一つ下が「ミケランジェロらの超一流クラス」。いまは「下から5、6番目ぐらい」。「50代後半から60歳代で自分のピークをつくろうと思う。そのころ8段階まで上がれるか」。
その最上位ともいえる「千年彫刻」という壮大な計画がある。スペイン・バルセロナのサグラダ・ファミリアのように代を継いで、東洋彫刻の技を駆使した巨大建造物をつくろうというのだ。その目標にそった「百年彫刻」「十年彫刻」とともに、完成予想図が作業場に掲げてある。
「十年彫刻」の本尊にあたるのは木彫で立体の「六道輪廻図」。その一部の「馬頭観音座像」は、すでに細部まで彫り進められている。
自分の一生でどこまでいけるか。休むと腕がなまり「1日休むと3日戻る」という。この8年間で10日ほどしか休んでいない。
計画を進めるには後継者も必要だ。いま44歳。50歳ぐらいのころに、30歳ぐらいの有能な人を見つけなくては、と思い定めている。
(文・写真 真田正明)
▼清方生誕145年記念東の美人画家、鏑木清方 ―上村松園とともに
6月25日まで鏑木清方記念美術館。「露の干ぬ間」など江戸情緒豊かな作品を中心に「東の清方、西の松園」と並び称された京都画壇の上村松園の近代美人画を紹介。450円。
▽特別展示解説 6月10日13時半。清方、松園の作品多数を所蔵する愛知の名都美術館学芸課長・鬼頭美奈子さんの解説。
23・6405
▼鶴岡八幡宮の季節展 「春」
6月30日まで鎌倉文華館鶴岡ミュージアム。鶴岡八幡宮の所蔵品や文豪ゆかりの品の展示と春から初夏の祭りと祭りで使用される装束や祭具などを展示。6百円。
55・9030
▼川喜多映画記念館の催し
▽BOWシリーズの全貌―没後30年川喜多和子が愛した映画
6月25日まで。80~90年代にミニシアターブームの一翼を担ったフランス映画社の古典的から新世代を紹介するBOWシリーズを牽引した川喜多和子が愛した作品を振り返る。2百円、鎌倉市民無料。
●特別上映 6月3日13時半、「東京画」上映+トーク。1600円。
●関連上映 6月13・18日10時、14・16日14時、「火まつり」13・15・18日14時、17日10時半「夢みるように眠りたい」各千円、小中学生5百円。
▽ハロー!キートン出張活弁上映会 6月17日14時鎌倉児童ホーム。「荒武者キートン」の活弁上映。1200円。
川喜多映画記念館 23・2500
▼仏画入門―はじめまして! 仏教絵画鑑賞
7月2日まで鎌倉国宝館。「仏画」の世界をジャンル別に紹介し、平常展示「鎌倉の仏像」とあわせて鎌倉に伝わる仏教絵画の世界を堪能する。5百円。
22・0753
▼みわたす絶景 名所絵×鳥瞰図の魅力
7月2日まで藤澤浮世絵館。大正期を中心に活躍した芸術家で鳥瞰図を観光案内に用いた吉田初三郎らを紹介し、江戸から昭和期にかけて地理的な案内や名所などの特徴の変化を辿る。無料。
0466・33・0111
▼細川護熙 美の世界
6月11日まで平塚市美術館。60歳を機に政界を引退した護熙が湯河原の自邸で制作した焼物、漆絵や書画、水墨画など百点。8百円。
0463・35・2111
▼本の芸術家・武井武雄展
6月3日~7月23日神奈川近代文学館。詞文、画、印刷技法、素材の調和を追究した画文集「武井武雄刊本作品」全冊と著作や関連資料など約1800点の収蔵品を中心に足跡を紹介。5百円。
045・622・6666
画像=『愛蔵こけし図譜』©岡谷市・イルフ童画館
▼ふくぶんファミリーシネマ「大コメ騒動」
6月11日10時半・13時半、葉山町福祉文化会館。大正時代、格差社会を変えた女性たちの実話。千円。
同館 046・876・1871
▼第6回神奈川工芸美術展
6月21~28日県民ホールギャラリー。陶磁、染織、人形、竹藤、硝子など。無料。
現代工芸美術家協会神奈川・静岡会 080・6553 ・4689
▼鎌倉みどり音楽院 発表会
6月4日12時、鎌倉生涯学習センター。材木座の同院の小学生から大人までの生徒のピアノ。OBの演奏も。入場無料。
松井方 090・8089・7088
▼音楽が流れる講演会vol.2 アニバーサリーコンサート
6月11日14時、鎌倉生涯学習センター。村田佳代子さんの講演と村田望さんの歌、中澤美紀さんのピアノで「パリの空の下」など。2500円。
村田良策記念アトリエM主催。
スタジオエスポワール 090・2207 ・0031
▼女声合唱かまくらの風第13回定期演奏会―地球
6月17日14時、逗子文化プラザ。池辺晋一郎「森と人々と共に闘う」など風、森、水を謳った曲を演奏。千円。「福島の児童養護施設の子どもの健康を考える会」へのチャリティも。
新井方 0466・23・2722
▼Viva! Sul Améria
7月2日14時、横浜みなとみらいホール。村田望(歌)鈴木崇朗(バンドネオン)C・聡ギブソン(チェロ)鈴木菜穂子(ピアノ)がピアソラ、ヒナステラ、ヴィラ=ロボスの曲を。3千円。
スタジオエスポワール 090・2207・0031
▼音楽から出会う中原中也―蓄音機、SPレコードで聴く
7月17日14時、鎌倉芸術館。鎌倉ゆかりの詩人中原中也についての講演と中也が所蔵した物と同じ盤のレコードを聴く。講師は横浜市立大学・庄司達也教授。千円。
同館 0120・1192・40
▼講演会「奇跡の脱出劇をへて5年 チベット亡命者空白の10年を語る」
6月11日16時45分、鎌倉生涯学習センター。北京オリンピックの頃ドキュメンタリー映画を撮影し逮捕されたチベット出身の映像作家が獄中生活を経て米国に亡命。空白の10年と今を語る。要申込。無料。
アムネスティ・インタナショナル日本 鎌倉 080・3488 ・8688
▼海から考える地球・環境・平和―平和と地球を守るための憲法9条
6月24日9時50分、逗子市民交流センター。講師は気候危機対策ネットワーク・武本匡弘さん。要予約。7百円。
逗子・葉山九条の会・富塚方 046・878・6044
▼朝市
▽腰越漁協6月1・15日10時、腰越漁協事務所前。
32・4743
▽鎌倉漁協6月4日10時、鎌倉パークホテル駐車場。
22・3403
▼第6回小坪漁港船上市場
6月4日9時、小坪漁港岸壁。荒天中止。船上でアオリイカ、サザエ、シラスなどを販売予定。岸壁では漁師の店を出店。
逗子市観光協会 046・873・1111
▼ミニ園芸教室
6月4日マリーゴールドの花のはなし、10日土の養分を考える、18日中央公園内植物めぐり、24日秋冬ニンジンをつくろう。各10時半、鎌倉中央公園。無料。要申込。
45・2750
▼大船フラワーセンターの催し
▽コンサート6月4・18日各11・14時。無料。▽園長さんぽ11日10時。▽デジカメ教室17日9時半・13時半。千円。6日まで申込。▽色鉛筆植物画教室7月8日10時・13時半。2千円。23日まで申込。入園料4百円。
46・2188
▼藤沢小商いマーケット
6月11日10~16時、KIKI BASE FUJISAWA(藤沢市川名1―11―42)元工場をリノベーションした大型シェアスペースでフリマを開催。飲食スペースも。エンジョイワークス
53・8583
▼ふらっとカフェ鎌倉
食を通じて多世代交流
▽6月16日17時半~18時半二階堂デイサービスセンター。国際交流など。▽28日16半~18時半ソンベカフェ。各子ども無料、大人・テイクアウト5百円。
要メール予約flatcafekamakura@gmail.com
渡邉方 090・5199・1654
▼北鎌倉・台峯の緑をともに
▽山の手入れ6月17日10時、山ノ内配水池脇。
▽山歩き18日9時、山ノ内公会堂。
北鎌倉の景観を後世に伝える基金・望月方 45・7420
▼逗子の市(雨天中止)
亀岡八幡宮境内。
▽フリーマーケット6月23日8時半~14時半。雑貨・衣類・手造り品など約20店。▽骨董市24日7時半~14時半。※フリマ・骨董市出店者募集中。
片岡方 090 ・5442 ・3778
▼鎌倉ガイド協会 古都鎌倉史跡めぐり
A北鎌倉から扇ガ谷を花逍遥―アジサイ、「山野草の寺」松嶺院を巡る 6月16・19・21・23日9時、北鎌倉駅東口(円覚寺側)集合。約3・5km。
B和田合戦の火付け役「泉親衡」って―深緑の境川・和泉川でサバ神社の謎を追う 6月26・29日9時、湘南台駅地下広場集合。約5km。
C神武寺を訪ねる―源義朝・義平ゆかりの沼浜邸跡と光照寺にも 7月5日・7日・18日・20日9時半、JR東逗子駅改札集合。約2・5km。
各7百円。交通費、拝観料等別。HPから要申込。
24・6548
▼かまくらシニア健康大学
6月21日10時、深沢学習センター。「今日から実践!フレイル予防運動」。鎌倉市在住者対象。要申込。
市民健康課 61・3977
▼出張!冒険遊び場
6月24日10~14時、山崎・台峯緑地。基地づくり。無料。
かまくら冒険遊び場・梶原 47・1433
▼鎌倉生涯学習センターフェスティバル
6月23~25日。▽発表部門朗読、和楽器演奏、舞踏、合唱など。▽展示・教室・販売部門 書道、和服、絵画、写真、映画上映、英語講座、バザーなど。
25・2030
▼鎌倉ユネスコ協会バザー 6月11日10時~14時
場所:鎌倉ユネスコ協会深沢倉庫(深沢中学へ上る手前の信号右折の長屋)。
毎月第2日曜、雨天開催。※献品受付:衣類・着物・雑貨・支援用食糧品。
問合せ: 44‐9830
※書きそんじハガキでアジア寺子屋支援 未使用切手・プリペイドカードなども受付中。送付先:〒247-0075鎌倉市関谷387-13鎌倉ユネスコ協会書きそんじハガキ担当小倉宛。
問合せ: 080‐6602‐9498
★市の施設等に書きそんじ回収BOXを設置
6月25・28日10時~12時半、鎌倉市福祉センター。市内在住・在学の小4~6対象。手話や車いす、要約筆記、点字などの福祉体験。午後はミニ縁日も。要申込。無料。
市社協 23・1075
小津安二郎監督作品 「麦 秋」
6月23日10時、鎌倉生涯学習センター。
鎌倉に住み、大船撮影所で名作を生んだ小津安二郎監督を顕彰し5月22日を「映画アンパンの日」と定め、記念上映会「麦秋」を開催する。千円、たらば書房、島森書店扱。
鎌倉で映画と共に歩む会・藤本方 080 ・5055・3935
漆の美 日本の美 佐伯 仁
●塗りと彫りと翳りの美
6月。水無月。
漆の木は黄緑色の小花をつける。雌雄異株で雌は蝋、雄は漆を採る。
先年、函館・垣の島の9千年前の墳墓で遺体発掘。髪に赤い漆染めの糸。赤は太陽の色、死者の再生を願った証では?
6世紀、中国から仏教と共に漆芸が渡来。法隆寺に玉虫厨子が創られ、正倉院には名品が現存。
平安期、独自の華飾法=蒔絵が竹取物語に初め記されている。
7世紀、明日香や大宰府跡の漆運搬容器は「漆は税」と語る。
漆の普及は平安末期に岩手・平泉に金と漆で飾った秀衡椀が誕生。鎌倉期には禅宗寺院が続々建立。仏師は仏具・日常具を様々工夫。その感性は明治期、鎌倉彫の茶道具を普及させた。
一方、戦国期、和歌山に根来塗が誕生。黒漆を下塗りし、朱を施す。歳月を経て、下地の黒が浮かぶ侘びた風情。
対照的なのは輪島の沈金。珪藻土を“地の粉”にし金で華麗に彩る。美の極致、日本の美として海外でも絶賛されている。
漆器を讃えたのは谷崎潤一郎「陰翳礼讃」。漆器を燭台の薄明りで照らし、塗りと彫りの深い陰翳に魅かれている。
鳥が来る泉の鹿は花漆 能村登四郎
日本の再生を文化の祖型から考える 池田雅之
5月12日に宗教哲学者の町田宗鳳さんに呼ばれ、二人で「日本の結びと再生の思想とは何か」というテーマで対談を行った。会場は医師の内海聡さんが所長を務めるNPO法人薬害研究センターで開催された。
内海さんは最近『2025年日本はなくなる』という衝撃的なタイトルの本を出されたので、今回の対談でこの書に対する私なりのリスポンスを提案してみたいと思った。
内海さんは本書で「コロナ後にやって来るこの国のヤバすぎる真実」を実証的に列挙されておられる。一読すると不安にかられる。それで町田さんと私は、日本の再生のヒントを時代をさかのぼり、日本の神話と伝承の中から導き出してみようと試みたのである。
町田さんも私も、日本文化の祖型として、伊勢の「常若」、熊野の「再生」(甦り)、出雲の「結び」の三つの思想を取りあげて語り合うことになった。この「常若」「再生」「結び」の思想は、時代を超えて今日まで私たちの〝DNA〟、無意識の中に脈々と生きている起死回生の知恵といってよいものだ、と思っている。
伊勢神宮が20年ごとに行う遷座祭、俗にいう神様(アマテラス)のお引っ越しは、内宮を建て直すという神事を通じて神の神威を刷新することにある。それによって私たちは再び神とつながり、祈りと共に永遠の生命をいただくのである。この神事は、神様と人間の生命の力を復活させる。
熊野もまた再生の地といわれている。しかし、熊野における「再生」は伊勢の「常若」とは異なり、擬似的な死から本来の生への復活へと転ずる甦りである。古事記の東征神話などは、神武天皇の熊野山中での仮死体験から再生へと復活をとげる起死回生の物語なのである。熊野一帯には古来より、神仏習合の風土ゆえか、死から生へと立ち返る救済的再生譚が多い。
もう一つは出雲の「結び」の思想である。町田さんは、とりわけ日本文化の祖型の代表的なものは「結び」の思想にあるといわれた。出雲大社は一般に若い男女の縁結びの神社として有名だが、本来の「結び」はもっと広く、深い意味をもっているという。「結び」は男女のみならず、神と人間を結び、また異質なもの同志をもつなぐのである。
多神教の国である日本は、一神教の国ともうまく交流できるので、世界平和に資する国際的な役割も今後期待されるにちがいない。
私たちは日本文化の祖型の中に連綿と流れている再生と生きなおしのための思想を紹介してみたが、伊勢、熊野、出雲などのいまだ知られざるdeep Japanから学ぶことはまだまだ多いと思う。
(早稲田大学名誉教授・鎌倉てらこや顧問)
鎌倉市中央図書館(4月分)
鎌倉市中央図書館(25・2611)は4月に一般256冊、児童書33 冊を収蔵した。一般的なものは下記の通り。 ▼「強運が来る兆しの法則-「流れ」をつかめば「願い」はかなう」秋山眞人著 河出書房新社 ▼「自分が高齢になるということ」完全版 和田秀樹著(朝日新書) ▼「超選ばれる人-「あなたしかいない」と言われる人が実行している3ステップ」麻加真希著 幻冬舎 ▼「「幕府」とは何か-武家政権の正当性」東島誠著(NHKブックス) ▼「正義の味方が苦手です」古市憲寿著(新潮新書) ▼ 「「丁寧」なのに仕事が速い人の習慣-感謝され、利益も2倍になるビジネスの絶対法則」池田輝男著 幻冬舎 ▼ 「日本海軍連合艦隊の研究」木村聡著 北海道大学出版会 ▼ 「もう惑わされない!健康診断、人間ドック-“過剰医療”から身を守る」宝島社(TJ MOOK) ▼ 「ZEN呼吸-「健康」は白隠さんから」椎名由紀著 横田南嶺著 春秋社 ▼ 「365日花あふれる庭のガーデニング-おしゃれな庭の舞台裏」ガーデンストーリー著 KADOKAWA ▼ 「長谷川町子私の人生-漫画、家族、好きなこと」長谷川町子著 朝日新聞出版 ▼ 「人は何歳まで走れるのか?-不安なく一生RUNを楽しむヒント」南井正弘著 集英社 ▼ 「小津安二郎」平山周吉著 新潮社 ▼ 「頭のいい子が育つ葉加瀬太郎の英語のうた」葉加瀬太郎著 向日葵著 新星出版社 ▼ 「シニア右翼-日本の中高年はなぜ右傾化するのか」古谷経衡著(中公新書ラクレ) ▼ 「日本を味わう366日の旬のもの図鑑」暦生活著 清絢執筆 淡交社 ▼ 「不安型愛着スタイル-他人の顔色に支配される人々」岡田尊司著(光文社新書) ▼ 「音楽と生命」坂本龍一著 福岡伸一著 集英社 ▼ 「街とその不確かな壁」村上春樹著 新潮社
「泊まれる研修施設」に
鎌倉市大船の地区300年を越える「甘糟屋敷」が「泊まれる研修施設」として4月1日にオープンした。宿泊利用は6月から開始予定。
この屋敷は、大船一の地主で、大船村の名主であった甘糟家の中世豪族屋敷を思わせる武家屋敷で、1708年に建てられ、1985年に改修された。昨年、持ち主の甘粕知一郎さん(76)から、鎌倉を拠点に空家再生・利活用などに取り組むエンジョイワークス(鎌倉市・福田和則代表取締役)に屋敷の活用の相談があり、同社が研修施設としての企画・運営をすることになった。
伝統的な日本建築の畳の間や襖、縁側など日本文化を体感でき、千坪を超える広大な敷地には、四季折々の草木が茂り、竹林や池もあり、小鳥のさえずりが聞こえる。
鎌倉市大船2078(大船駅と北鎌倉駅から徒歩圏内)。9時~18時 (9時間)の利用料165,000円(税込)。施設を運営する同社の子会社グッドネイバーズの小林徹也さんは「企業が元々持っている魅力を再発見できる施設だと思う」と話している。
問合せグッドネイバーズ 080 ・2117・3217
3年ぶりに
鎌倉・材木座海岸の国指定史跡・和賀江島の清掃活動が大潮の5月21日行われ、約200人が参加した=写真。 和賀江島は、鎌倉時代に造られた現存する日本最古の築港。1977年から地域住民を中心に清掃活動が行われており、47回目。2007年から材木座自治連合会が主催し、新型コロナウイルス感染拡大の影響で3年ぶりの開催となった。北上市和賀江島清掃団、岩手県人会などのメンバーらも参加した。同連合会の渡辺英昭会長の挨拶のあと、伝統芸能・天王唄が披露され、集まった人たちはゴミ袋を手に岩場に向かって散らばっていった。
葉山の海岸で
葉山産のヒジキを通して子どもたちに海藻の生態やおいしさを伝える「葉山キッズひじきDAY」がヒジキ漁解禁日の5月3日真名瀬海岸であり、小学生と保護者約70人が参加した=写真。 漁業権が設定されている磯でヒジキを採れるのは漁師のみ。子どもたちは葉山唯一の女性漁師長久保晶さん(37)と水揚げされたヒジキを洗い、鉄釜で薪を焚いて蒸し上げる伝統製法を体験。乾燥ヒジキからエビやカニなどを除く作業もした。 ヒジキランチの後、葉山アマモ協議会に参画する研究者の山木克則さん(57)が葉山沖の深刻な磯焼けの状況や再生活動の成果で徐々に蘇り始めた藻場の様子などを解説。昨年この催しでの学びから打ち上げられた海藻から弁当のおかずカップを研究開発した逗子の小学6年生3人組「海藻キッズ」の発表も。 参加した母子は「ヒジキがなぜこの値段になるかわかったので大切に食べたい」と納得。企画をしたダイバーの武藤由紀さんは「子どもたちへ豊かな海を伝えたい。次は百人規模で」と期待を膨らませていた。(K)
福祉をPR
鎌倉市体育協会(加藤清和会長・31団体)は各団体が推薦する功労者7人、令和5年度に活躍した優秀選手19人、優秀団体3を5月19日鎌倉芸術館で表彰した。
【体育功労賞】金子由紀子(水泳)金子彰(陸上)寺平君代(弓道)秋丸幸治(スキー)斎藤浩司(サッカー)藤本和朗(ラグビー)柴田麻由子(太極拳)
【優秀選手賞】伊藤槙紀 (卓球) 井上基大・小林友里(以上水泳)明楽賢一・岡田光生・伊藤晋平・森岡祥彬(以上柔道)星井眞・松岡隼(以上テニス)今村かおる・酒井芙美・柏谷快音・今村英恵(以上なぎなた)黒川正人・林田優希(以上スキー)芋生信一・根本香織(以上居合道)田路幸子(太極拳)高橋侑里(ボウリング)(敬称略)
【優秀団体賞】鎌倉レッドサン(野球)、三菱電機(株)鎌倉製作所 テニス日本リーグチーム、(一社)鎌倉ラグビースクール
横村 出 著
「二〇二三年、ロシアのウクライナ侵攻から一年たつ日に」と、あとがきにある。10の短編の舞台はロシア、アフガニスタン、ワルシャワ、香港…すべて著者が訪れたところだという。日本人として日本に暮らしているとあまり直面することがない国籍や宗教や政治体制などの違いから生まれる物語が、それぞれの土地の歴史を背景にして語られる。
読んでいると、いつの間にか登場人物や繰り広げられる日常に、どこか自分もかかわっているような気分になるのは、舞台となる町が生活者の視線で淡々と描かれているからだろうか。「デジャヴ」という言葉が浮かんだ。
10編のうち9編は2016年に書きあげたそうだが、書名となった「漆黒のピラミッド」は今回一冊にまとめるにあたって書き下ろしたという。ウクライナのロシア侵攻が続くなかで、人間はどんな未来を描くことができるのか。
元朝日新聞の海外特派員として世界の紛争を取材してきた著者は「戦争やテロのさなかにある人は、どうやって生きる希望をつなぐのか」と考える。その答えが本書に潜んでいるように思える。
1760円(税込)、新潟日報メディアネット刊。
北鎌倉湧水ネットワーク
2000年10月に北鎌倉・六国見山の森が育んだ湧水を使った地ビール「北鎌倉の恵み」を世に送り出すために発足した「北鎌倉湧水ネットワーク」の22年にわたる活動の記録を、同会代表の野口稔さん(74)が出版した=写真。
地ビール誕生の経緯、同会が取り組んできた団塊世代の地域デビュー支援、鎌倉の里山・六国見山を再生し、人と自然が交流できる里山として次世代に継承するための「鎌倉の美しい里山継承プロジェクト」のほか、地域に根ざした情報発信の観点から「ガイドブックに載らない北鎌倉の神々」の出版(2008年)、「石田泰尚・山本裕康デュオ・リサイタルin建長寺」などを紹介している。
里山とは何か、SDGsとは何か、市民活動の活動資金どのように確保するかなどが読み取れる。
同書には、カラー写真約500枚が収録されているが、同会のサポーター「しまむら写真工房(島村國治さん)」の協力で企画から出版に至る全行程を独力で行えたこともありがたかったという。1000円(税込)、たらば書房扱。
北鎌倉湧水ネットワーク 0467・41・1817
「鎌倉山緑雨」 黒川 明
鎌倉には風情のある路が少なくない。鎌倉山のいわゆる桜道も風情たっぷりだ。鎌倉山から延びる道には笛田方面や七里ガ浜へ通ずる細道もあるが、桜道はロータリーから常盤に通ずるつづら折りの市道。
沿道のソメイヨシノは古木だが、花のトンネルは今でも人々を引きつけている。花が終わると新緑。雨が降ろうものなら若葉から緑のしずくが降り注ぎ、アスファルトは別世界を映す鏡となる。
「風情」似合うねぇ。
水彩 46×61cm
6月
▼葛原岡神社例大祭 3日10時神前祭・墓前祭。4日12時45分神輿渡御。
▼蛍放生祭 10日19時、鶴岡八幡宮。
▼五所神社例祭 10日18時見目明神祭・宵宮祭。11日10時例大祭、11時神輿渡御、13時半海上渡御。13日10時三つ目神楽。
▼瑞賢忌 16日10時、建長寺。江戸初期の豪商で治水工事や航路開発の功労者河村瑞賢の法要。
▼大祓・古神札焼納祭30日鶴岡八幡宮。
▼海開き 30日逗子。
鎌倉文学館は旧前田公爵家の別邸で、1936年(昭和11)に建てられた西洋館です▼1983年に鎌倉市に寄贈され、1985年に開館しました▼歴史ある建物を活用しながら、鎌倉ゆかりの文学者を紹介するだけでなく、庭園のバラを目当てに訪れる人も多いように思います▼建物の経年劣化が進んだことから大規模な修繕工事で2023年4月から2027年3月までの4年間、休館となります▼鎌倉の文化を語る際には欠かせない「鎌倉文士」。文学者たちが愛した「鎌倉」という存在を、文学館から見える景色や展示に触れることで伝えてくれる空間でした▼鎌倉の文学史において「空白の4年間」とならないことを願います。 (N)