鎌倉朝日新聞 (4月1日号 2022年 第517号)

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「ウクライナに平和を」

市民団体が募金活動

ロシア政府の侵攻によりウクライナが危機に瀕していることを憂慮し、鎌倉ユネスコ協会(佐藤美智子会長)が緊急支援の募金活動を3月10・11・12の3日間、鎌倉駅東口周辺で行った=写真上。52万3593円の募金(寄付含む)が集まり15日、国連WFP、日本ユネスコ協会連盟のウクライナ緊急募金に送った。 鎌倉手作り甲冑とんぼの会(進藤延二会長)は小学生を含む会員たちが甲冑姿で3月12・21の2日間、鎌倉駅東口駅前に立ち、募金活動を行った=写真下。寄付を含む30万円を22日、ウクライナ大使館に送金した。進藤会長(74)は「我々が(街頭に)立つことで役にたてれば」と呼びかけに力を込めていた。


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鎌倉こども能

17人が成果披露

鎌倉市が、子どもたちが日本の伝統文化の能に接する機会を提供しようと行っている「鎌倉こども能」の発表会が3月12日、鎌倉能舞台(鎌倉市長谷)で行われた=写真。 2018年度から実施されていて、参加者は市内在住、在学の小学4年生から中学生まで。3回目の今回は17人が参加し、7月から能楽師中森貫太さんらの指導で稽古を重ね、本番は本物の装束、舞台で成果を披露。 演目は「土蜘蛛」。頼光役で美声を響かせた手島福太郎くん(小学4年)は「結構うまくできた」、僧役の松本旭生くん(小学6年)は「緊張してセリフが早くなった。せりふを合わせるのが難しかった」、土蜘蛛の精を演じた水本あや芽さん(中学3年)は「かつらが重かったけど、糸をとばすのもうまくできた」と充実した表情でこの事業の継続を願っていた。


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FC小坂が優勝

少年サッカーRC杯

第32回鎌倉ロータリークラブ杯少年サッカー大会の準決勝、決勝戦が2月11日、笛田公園グラウンドで開催された。 鎌倉ロータリークラブ(箱山直樹会長・会員81人)の主催で、市内12の小学生チームが参加した。決勝戦はFC小坂と湘南ルベントが対戦し、PK戦で小坂がゴールを決めた。「優勝できたのは初めて」と選手たちの喜びはひときわだった。 閉会式で同ロータリークラブから、3位のおなりレパーズ、関谷SC、2位の湘南ルベント、1位のFC小坂の選手たちに銅、銀、金のメダルが授与され、小坂には優勝カップも手渡された。同会から全チームにサッカーボールの寄贈もあった。


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鎌倉みほとけ紀行(119)

覚園寺・薬師如来三尊坐像

大河ドラマ「鎌倉殿と⒔人」の主人公北条義時公ゆかりの鷲峰山真言院覚園寺さまを訪ねました。光栄にもご住職自らのご案内。入山した瞬間、体が清らかさに包まれるような感覚。緑豊かで雄大で落着いた伽藍に心和みます。歩を進めいよいよ本堂、薬師堂へ。「わぁーっ」と声が出てしまうかのような存在感のある薬師三尊仏。自然に手が合わさります。 北条義時が開いた大倉薬師堂にはじまり、幾星霜を経て覚園寺薬師三尊仏は今なお疫病や災難から人々を救ってこられたのであろうか。 中尊、薬師如来坐像は、みひらきのつよい眼、ふくよかなお顔。また手を定印に結びそこに薬壺が置かれている薬師仏 はとても珍しいそうです。そして脇侍に日光・月光菩薩が軽妙なお姿でお付きになり、日夜導いて下さっています。 お参りして、ふと、どこかでお会いしたかのような感じがしました。そうです。筆者がお世話になった建長寺の丈六の地蔵尊と雰囲気が似ているのです。法衣を垂下し、ゆったりとした雰囲気は中国宋代を思わせ、特に台座やその蓮弁などは建長寺のものとそっくりです。(自分では大きな発見でしたが、当時の鎌倉地方の作風として有名という) 様々な伝説に満ち溢れる覚園寺。古きを守り、そして今の時代に添い、親しく参拝者に声をかけ案内される若き住職の情熱に感謝。静寂の大伽藍はまさに、「別天地、覚園寺」。古刹は春風で満ちていました。
薬師如来、日光・月光菩薩坐像ともに木造、寄木造、玉眼、彩色。像高〈薬師〉181・3㎝、〈日光〉149・4㎝、〈月光〉150・0㎝。鎌倉~室町時代。重文。



鎌倉芸術館が再スタート

鎌倉芸術館は市内では最大規模の文化施設として1993年(平成5)の開館以来、芸術文化の振興に貢献し、芸術を愛する多くの市民に親しまれている。2006年度から指定管理制度が導入され、17年から「サントリーパブリシティ」が運営を担ってきた。 4月1日から鎌倉文学館、鏑木清方記念美術館を運営している(公財)鎌倉市芸術文化振興財団が担うこととなった。これまでの実績から市内の芸術家、市民との相互連携がさらに向上すると思われ期待したい。(2面「ひと」に関連記事)


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「ひと」
鎌倉芸術館長に就任した

永井 健一(ながい けんいち) さん

鎌倉芸術館の指定管理者が、4月から鎌倉市芸術文化振興財団に変わるとともに、館長に就任した。神奈川県民ホールや県立音楽堂で培った運営の技能が生きる。 もともと音楽家志望だった。横浜市の生まれ。小学校の高学年から作曲家を目指し、和声学、ピアノ、ソルフェージュと、3、4人の先生から個人レッスンを受けた。 鎌倉学園高校3年の時に、「芸大の作曲科は入学までに5年かかる」と言われ、上智大法学部に進んだ。そこで混声合唱団に誘われ、指揮者になる。 今度は声楽に興味を持ち、個人の先生につく。そうこうするうち大学は8年満期に。親から「本場に行ってこい。諦めがつくだろう」と言われ、イタリア・ミラノの音楽学校に入った。 3年間、声楽やオペラを勉強した。しかし、「プロになる人は伸びがすごい。努力しても実らないものがある」と限界を感じ、30歳で帰国した。 ちょうどそのころ、神奈川県が文化施設を財団運営に切り替える動きがあり、神奈川芸術文化財団の専門職員一期生として採用された。 28年間、財団に勤めた。うち24年は県民ホールの事業や企画担当と副館長。最後の4年は音楽堂の館長だった。60歳の定年を前に、鎌倉に来ないかと話があった。 かつて「サントリーショック」という言葉があったという。1986年、東京・赤坂にサントリーホールができたときだ。 レセプショニストと呼ばれる案内係、クロークやロビーでのワインやコーヒーのサービス。音楽を聴く前からシティホテル並みのもてなしがある。「ダサい」イメージがあった公立文化施設の関係者には衝撃だった。その後、公立施設もオペラハウスや劇場などへの特化が進み、レセプショニストも標準になった。 鎌倉芸術館は来年30周年を迎える。バブル経済のころのデザインで「いい意味でぜいたくに造られている」という。設計のコンセプトが「庭」で、前庭からロビーに入ると、中庭の竹林が見える。音の響きがいい大ホール、演劇も上演できる小ホールなど、人口十数万人の自治体で「こんな規模の施設を持っているところはない」。 近年は公立施設同士の事業連携が進んでいるといい、県の文化施設での経験も発揮できる。
「市民目線で市民の中に入っていくような施設に。市民が誇りに思える施設であり続けたい」
(文・写真 真田正明)



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み る

▼川喜多映画記念館
企画展「追悼・山内静夫 松竹大船撮影所物語」6月12日まで。鎌倉に生き、鎌倉を愛した名プロデューサーを偲び、松竹大船撮影所と映画文化の歩みを辿る。2百円。
▽関連上映 4月5・10日10時半、6・8日14時「早春」5・7・10日14時、8・9日10時半「秋日和」19日10時半、20・22・24日14時「青春残酷物語」19・21・23日14時、24日10時半「夜叉ヶ池」各千円、小中学生5百円。
▽特別イベント4月9日13時半『早春』上映+トーク「映画に吹く里見弴と鎌倉の風」。ゲストは小津研究者で同志社女子大学准教授の宮本明子さん。1600円、小中学生8百円。
23 ・2500
▼生誕110年 吉田健一展 文學の樂み
4月2日~5月22日。県立神奈川近代文学館。2016年に受贈した資料約5700点の「吉田健一文庫」を中心にその生涯と作品を辿る。7百円。
045・622 ・6666
▼北鎌倉古民家ミュージアムの催し
▽おひなさま展 (江戸時代を中心に各時代のお雛様。)・五月人形展 5月8日まで。
▽樹脂粘土 野の花・野草アート展 4月20日まで。素朴な野の花を樹脂粘土でリアルに再現。5百円。
25・5641
▼道工房銅版画展
4月12日まで雪ノ下の道ギャラリー。アート作品制作で障害者の就労支援を行っている道工房の作品展。無料。
23・8772
▼現代美術
草間彌生・李禹煥他。
ギャラリー伸 244081
▼ギャラリー一翆堂
▽田中隆史展―華と宇宙と4月5日まで。独自開発の釉薬を用いた「華シリーズ」の茶碗など。
▽草野啓利 吹きガラス展 4月8日~6月30日。
各無料。一翆堂 22・3769
▼「同席対面五百生」琅玕居 西松凌波展
4月15~25日雪ノ下のギャラリージ・アース。現代の文人画家・西松凌波さんの傘寿記念展。書画ほか、焼き物、漆器類などのコレクションも。無料。
25・5235
▼映画「咲む」上映会
4月16日14時半、逗子文化プラザ。困難に立ち向かう“ろう者”を通し、手話言語や共生社会とは何かをテーマにした映画。1200円、小中学生5百円。
逗葉地域上映会実行委 090・7894 ・0388
▼第8回湘南Vividアート展
4月22日~5月1日藤沢の蔵まえギャラリー。プロ、アマ、障がいの有無の壁を超えた平面、立体表現の展示発表。
0466・25・9909
▼光明寺寺宝展
5月8日まで光明寺。所蔵の當麻曼荼羅縁起(写本)などを特別展示。3百円。
22・0603


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き く

▼あなたのショパン夜想曲―前編・後編
4月2日12時半、旧東京音楽学校奏楽堂。9日13時半、鎌倉芸術館。2公演で夜想曲全曲とバッハ、ラフマニノフ作品も演奏。前売り2500円。
スパシーバ 090・6568・3853
▼吉川久子フルートコンサート―つるし雛とともに
4月9日14時、鎌倉芸術館。ひな人形、ひな飾りゆかりの県の子守歌と日本の曲。4500円。
吉川久子フルートオフィス 045・843・9740
▼鎌倉音楽クラブ 春のコンサート
5月8日14時、鎌倉生涯学習センター。創立76年の音楽クラブ会員らのコンサート。ピアノ、ソプラノ、ヴァイオリン、室内アンサンブルなど。1500円。
齊藤方 070・3131・5971



さんか

▼鎌倉青年会議所の催し
▽多様性の創り出す未来4月9日13時、建長寺。共生社会や「鎌倉市共生社会の実現を目指す条例」を実践アートやトークセッションから学び考える。講師は同会永田 磨梨奈理事長、松尾崇市長、アーティストの三橋鎌幽さんら。5百円。
▽もの繋ぎパネル展10日10~16時、建長寺。鎌倉での新たな繋がりを構築する為に100団体が参加した「鎌倉もの繋ぎプロジェクト」のパネル展。5百円。
25・5538
▼鎌倉ユネスコ協会
▽バザー4月10日10~14時、同会深沢倉庫(深沢中学へ上る手前の信号右折の長屋)。毎月第2日曜、雨天開催。※献品受付衣類・着物・雑貨・支援用食糧品。
44・9830
▽書きそんじハガキでアジア寺子屋支援未使用切手・プリペイドカードなども可。鎌倉市御成町11―40Mビル3Fへ。
080 ・6602・9498
▼ふらっとカフェ鎌倉
食を通じて多世代交流
▽4月15日17時半~18時半二階堂デイサービスセンター。音楽会、国際交流、弁当のテイクアウト。
子ども2百円、大人5百円。▽20日16~18時ソンベカフェ。テイクアウトのみ。5百円。メールで
予約flatcafekamakura@gmail.com
渡邉方 090・5199・1654
▼北鎌倉・台峯の緑をともに
▽山の手入れ4月16日10時、山ノ内配水池脇。
▽山歩き17日9時、山ノ内公会堂。
北鎌倉の景観を後世に伝える基金・望月方 45・7420
▼第24回鎌倉 極楽寺・稲村ガ崎アートフェスティバル
4月15~24日極楽寺、稲村ガ崎各所。海と山と歴史とアートをテーマに2年半ぶりに開催。ジャズライブやワークショップ、飲食、史跡巡りなど。
実行委 32・9832
▼逗子の市(雨天中止)
亀岡八幡宮境内。
▽フリーマーケット4月27日9~15時。雑貨・衣類 ・手造り品など約20店。
※出店者募集。片岡方 090・5442・3778
▼雑草と育てる土づくり畑づくり
4月22日~11月25日の第4金曜10時、鎌倉中央公園、全8回。公園サポーター養成講座。市内在住・在勤者で全日程参加できる人。無料。申込は催し名、住所、氏名、を明記しハガキで山崎1667鎌倉市公園協会。8日必着。
45・2750



まなぶ

▼経営力を磨く―求められる経験者の資質
4月18日18時半、KOTOWA鎌倉鶴ヶ岡会館。活力あふれる朝礼の実演と倫理研究所法人スーパーバイザー・福田康生さんの講演。2千円。
県倫理法人会 045・315・2433
▼玉縄城域文化財ガイド育成講座
4月7日開講、龍寳寺。9月まで木曜13~15時、全10回。講師は伊藤一美さんら。2千円。
玉縄城址まちづくり会議 45・7411
▼鎌倉の多世代交流事業
市内在住の小学生以上対象。申込は1日9時から各センターへ。
【名越やすらぎセンター】
▽皆で抹茶を楽しむ教室 4月23日14時。4百円。▽太極拳体験教室 5月21日10時。無料。
25・1188
【腰越なごやかセンター】
▽みんなで楽しめるヨガ 4月24日10時半。無料。▽キッチンハーブの寄せ植え作り 5月15日10時。千円。
31・0800
【教養センター】
▽運動嫌いのストレッチ教室 4月24日10時。無料。▽木でおもちゃの車づくり 5月15日10時。5百円。
32・1221
【今泉さわやかセンター】
▽はじめての囲碁 4月23日10時。▽ピラティスって、なあに 5月22日13時半。各無料。
45・4611
【玉縄すこやかセンター】
▽米袋でエコバッグ作り 4月23日10時。150円。▽ハーバリウム講座 5月21日10時。千円。
47・1338
▼点訳者養成講座
5月12日~9月15日毎週木曜18時半、全15回。玉縄青少年会館。点訳ボランティアを始めたい初心者向け講座。2千円。鎌倉市点訳赤十字奉仕団・夜間部主催。
木村方 45・3555



購入新図書のリスト抄

鎌倉市中央図書館(2月分)

鎌倉市中央図書館(25・2611)は1月に一般218冊、児童書21冊を収蔵した。一般的なものは下記の通り。 ▼「京大芸人ノート-人生の悩みを解決する思考術」ロザン著 宝島社 ▼「ヒトの壁」養老孟司著 新潮社(新潮新書) ▼「鎌倉幕府はなぜ滅びたのか」永井晋著 吉川弘文館(歴史文化ライブラリー) ▼「鎌倉殿と13人の合議制」本郷和人著 河出書房新社(河出新書) ▼「北条政子、義時の謀略-鎌倉幕府争乱期を読む」永井晋著 ベストブック(ベストセレクト) ▼「経営のこころ-会社を伸ばすリーダーシップ」稲盛和夫述 稲盛ライブラリー編 PHP研究所 ▼「食卓の上の韓国史-おいしいメニューでたどる20世紀食文化史」周永河著 慶應義塾大学出版会 ▼「不調が消え、免疫力アップ毎日の冷えとり漢方」川嶋朗著 河出書房新社 ▼「不眠症の9割は歩くだけで治る-歩いて、紫外線を浴びれば自然に眠れる」長尾和宏著 山と渓谷社 ▼「日常の絶景-知ってる街の、知らない見方」八馬智著 学芸出版社 ▼「時代のカナリア-今こそ女性たちに伝えたい!」湯川れい子著 集英社 ▼「戦争と児童文学」繁内理恵著 みすず書房 ▼「それでも生きていく-不安社会を読み解く知のことば」姜尚中著 集英社 ▼「キッチンから始める人生の整理術-今の自分をもっと快適に生きる」村上祥子著 青春出版社 ▼「おしゃべりな台所道具」土切敬子著 オレンジページ


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児玉康子さん

作品募集 「病からの伝言~光と闇の狭間写真展」

公募型写真展「病からの伝言~光と闇の狭間写真展」が5月13~15日鎌倉彫会館Gallery gで開かれる。病を患うママ友の高嶋ひさよ、中川まりの両名がその想いを発信することで励みにしようと企画。病に出会った人たちの心の葛藤を写真とメッセージで展示するにあたり、作品を募集している。 出展の対象は疾患・持病のある方、または家族。当事者を含む人物が写っている写真1枚のデータと150文字のメッセージ。出展料1800円(出展記念フォトブック付)。
申込はHPから https://yamaikaranodengon.com/
4月17日締切。同事務局 090・6976・0620


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季節の心(63)

竹の秋 佐伯 仁

●竹との多彩な交わり 4月、卯月。草木は芽吹き、命あふれる季節。
日ごとに春めく日々のなかで待ち焦がれるのは大地から芽吹く筍。 春先の竹は地中の筍を育てるため、養分を懸命に注ぎ込む。その活力は“旬”の味として賞味されるが、それ以後、竹は色褪せる。 その姿を「竹の秋」と呼び、春の季語にしている。因みに竹の新芽が茂る陰暦8月を「竹の春」という。季節を示す日本語は実に多彩。 一方、竹には人知を超える霊力がある。 例えば「古事記」には黄泉からの帰路、醜女に投げた竹櫛の呪力で生還出来た神話がある。 「竹取物語」にはかぐや姫が竹から生まれたという話に命を生む竹の神秘を伝えている。 また笹の花の一斉開花も神秘。開花周期は120年、開花を題材に作家開口健は「パニック」を創作。咲いた花の実は小麦と同質のため、野鼠に襲われ町は大騒動。 「竹の秋」は竹が生まれ成長し、枯れる。その存在感は生きものの在りようをリアリティ豊かに伝えている。 同時に竹の季節が繊細な感性を育んできた背景も見逃せない。
 夕方や吹くともなしに竹の秋   永井荷風


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心のふる里を行く(45)

江ノ島の岩屋を巡る巡礼の旅 池田雅之

小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)が、バンクーバー経由でアメリカからはるばる横浜港に汽船アビニシア号で到着したのは1890年の4月4日であった。長い船旅であったが、八雲は日本の土を踏んだ喜びを「東洋の第Ⅰ日目」という作品に克明に記している。その後、およそ5カ月間、横浜を滞在地にして、鉄道、人力車、徒歩などを駆使して、横浜、鎌倉、江ノ島、藤沢などのめぼしいお寺と神社を巡っている。 日本到着早々の1890年4月中旬、八雲は通訳兼案内係の若き真言宗の信徒、真鍋晃を伴って湘南地区のあちこちに出かけている。横浜から大船まで1889年に開通したばかりの横須賀線の汽車に乗り、大船で下車すると、人力車に乗り継ぎ、禅寺の円覚寺、建長寺、円応寺を回り、鎌倉大仏、長谷寺を見学した。そして、極楽坂、稲村ガ崎を経て、巡礼の旅の終着点である江ノ島、藤沢へと向かった。この辺の事情は拙訳『新編 日本の面影Ⅱ』に詳しい。 二人は片瀬という小さな村で人力車を乗り捨て、干潮時を狙って、徒歩で江ノ島に渡った。130年前には、今日の立派な弁天橋は架かっていなかった。 江ノ島は絵の島ともいわれていたように、八雲にとって、名状しがたいいくつもの魅力が潜んでいたようだ。八雲は「それは、決して忘れることの出来ない、幾分か霊的な感動を伴った魅力」と表現している。 その後、八雲は江の島神社の三つの宮、辺津宮、中津宮、奥津宮、弁財天を参拝し、最後に、第二岩屋にあたる「龍神の岩屋」に足を踏み入れた。この岩屋こそは古くから多くの修験者たちの修行の霊場であり、空海や文覚上人などの僧も参籠し、神の功徳を得ることができると信じられていた祈りの場である。鎌倉幕府の初代執権の北条時政はこの洞窟に籠もり、龍の三枚の鱗を授かり、それを家紋にしたと伝えられている。 この二つの岩屋こそ、江ノ島の龍神信仰の原点といえよう。岩屋への参籠は、日本の古代信仰の祈りの場への巡礼であった。この二つの岩屋は、いにしえ人の祈りの場であり、江ノ島の龍神信仰が生まれた聖域でもあったのである。八雲たちの「江ノ島詣で」は、期せずして日本人の信仰の原点を訪ねる旅でもあった。
(早稲田大学名誉教授・鎌倉てらこや顧問)



終の棲み家を考える(95)

不動産~サブリース契約

「サブリース」というとお洒落でカッコよく聞こえていい事のように思えませんか。アパート等の賃貸物件の家賃保証の事です。 賃貸物件を造っても入居者が集まらなければ成り立たないことを解決するために賃貸物件の建築工事を受注していく仕組みです。 家賃保証をしてくれるので銀行融資を受けている場合など安心できる部分もありますが、賃貸事業として考えると、一番おいしい純利益の部分をリース業者に持っていかれています。借主と契約するのは大家ではなく、リース業者です。大家は低く抑えられた金額でリース契約するので当然利益が少なくなります。リース業者は礼金や更新料・管理費その他見えない部分でも利益を上げています。 数年前に全国的に問題を起こし話題になった○○パレスは最低の場合でも20%以上の粗利を出す仕組みをつくっていました。逆に見れば1つのリース契約で見える部分と見えない部分で20%以上の利益を家賃から出しているのです。入居者が集まらない場合はリース料を下げてもいい契約になっていますが、字が小さくて契約を結んだ本人が理解していないケースがかなりあるようです。
日向建設
鎌倉市大船1―15―3
0467・47・5454
http://www.hyuuga.co.jp/


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葉山で「もったいない食堂」

余剰の地産食材を活かして

葉山町上山口の和食店「葉山無垢」が地産食材のフードロス削減を発信する「もったいない食堂」に静かな人気が集まっている。横須賀の長井漁港から仕入れた規格外の魚や近隣の無農薬農家の余剰野菜を活かした千円の定食を毎週日曜の朝7~10時に提供している。 「無垢」は、大工の藤本嶺さんが工務店のモデルハウス兼和食店として2017年に開店した。近隣の友人アップサイクルジャパンの西村正行代表と「廃棄されるものに新たな価値を加える活動を葉山でも」と意気投合。昨年10月から「もったいない食堂」で、色や形が悪いだけで販路にのらない野菜や、大きさや数が揃わないなどの理由で廃棄されてしまう魚を使ったメニューを週替わりで提供。好評で定時前に完売することも。 囲炉裏を囲む席では客同士の新たな交流も生まれ反響も上々。藤本さんは「フードロスは世界的な問題だが『三里四方の食によれば病知らず』ということわざもある。我々30代から発信し多くの人に届けば」と朝定食に思いを込める。 (K)


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スケッチ日和(53)

「春」 黒川 明

大船の駅からも観音がよく見える。「なんだこりゃ?」という人もあるかもしれないが、大船のランドマークなのだ。 春は桜をまとって華やかだ。一昨年は観音寺の真向かいの丘陵から描いた。大梵鐘の位置を大きく動かして絵の導入部とした。描いてみるとバランスの良い顔だ。なかなかいいモデルである。動かないし、居眠りもしない。二度目に行ったときには葉桜になっていた。めぐる季節を観音はゆったりと見守り、僕は衣替えに追われた。
水彩画 31×41cm



鎌倉年中行事

4月

▼若宮例祭 3日10時、鶴岡八幡宮。
▼釈迦如来立像開扉 7・8・9日極楽寺。お堂の外から参拝のみ。
▼灌仏会(花祭り)8日各寺院。
▼忍性塔公開 8日10~16時、極楽寺。
▼丸山稲荷社例祭 9日10時、鶴岡八幡宮。
▼旗上弁財天社例祭 10日11時、鶴岡八幡宮。
▼銭洗弁財天宇賀福神社例大祭 10日11時。
▼初巳例大祭 10日11時、江島神社。
▼源頼朝公墓前祭 13日10時半、頼朝の墓。
▼鎖大師正御影供 16日青蓮寺。
▼武内社例祭 21日10時、鶴岡八幡宮。
▼昭和祭 29日10時、鶴岡八幡宮。
▼義経まつり16日満福寺。関係者で法要のみ。


プロムナード

新型コロナウイルス感染拡大やウクライナ情勢の悪化など、社会情勢が非常に緊迫した大変な状況に陥っています▼「マスク不要な平穏な日々を…」と、願っていましたが、ニュースでは心身共に疲弊して心を閉ざしてしまうような非日常が次々と報じられています▼暖かくなり、お花見などを含めた歓送迎会などが楽しめる季節になってきたのに、そのような光景が懐かしくさえ感じられています▼そして、2022年「鎌倉花火大会」も中止が決定されました。中止は3年連続です。感染拡大防止の観点からも苦渋の決断だったと思います▼世界中に響き渡るくらい、ドドーンと大きい花火のような、超特大の明るい話題を欲しています。(N)


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